著者情報
  • N°10 magazine
  • ナンバーテンマガジン
「ナンバーテン」。フットボールのエースの称号。
 その系譜をたどると、ひとつの個性とひとつの偶然に突き当たる。
 個性とは、エドソン・アランチス・ドゥ・ナシメント。ファーストネームは発明王、トーマス・エジソンが由来。蓄音機も電球も生み出すことはなかったが、ゴールを仕留める術は知っていた。1958年、初夏のスウェーデンで行われたワールドカップにて、褐色のインサイド・レフトは6ゴールを記録。カナリア色の背番号10(決勝戦では急遽用意したブルー)が母国ブラジルを悲願の初戴冠に導いた。
 偶然とは、くじ引き。大会を前にして、セレソンはチーム内で背番号の抽選を実施。17歳の若造が10番を引き当てたのだった。
 ブラジル、10番、ペレ、くじ引き。
 個性と偶然はここに絡み合った。しかしそれはあくまで端緒に過ぎない。系譜がつながり歴史となるからこそ、個性は称号と結びつき、当時の偶然は振り返ると必然の色彩を帯びる。そうしてフットボールは物語を宿す。
 例えば85年冬、今はなき国立霞ヶ丘競技場。ミシェル・プラティニが放った美しいシュートは、ネットを揺らすもゴールにならず。その時、肘をついて横たわったあの姿に。あるいは86年のメキシコ、エスタディオ・アステカ。ディエゴ・マラドーナは5名のイングランド人を抜き去り、3人の審判の目を盗んだ。その常識を覆すまでの勝利への飢えに。そして95年のミラノ。アッズーリのエース、ロベルト・バッジオがチームに加入。それでも赤黒の背番号10はデヤン・サヴィチェビッチで不変であった。その誇りのぶつかり合いに。
 そう。10番はフットボールの物語を紡いでいる。「ナンバーテン」とはストーリーテラーと同義である。勝利と敗北、誇りと見栄、名声と中傷。フットボールのど真ん中には、きっと10番がいる。
そして、リオネル・メッシ。1年で73ゴールを決め、欧州一の選手として4度も称えられた小さな怪物。そして、このほど初夏のベルリンで、バルセロナをヨーロッパの王者にも導いた。
 バルセロナ、10番、メッシ、必然。
カフェにある紙ナプキンで手早く契約をした、アルゼンチンの少年もまた、偶然を必然に変える人だ。大切なのは挙げたような記録ではない。その右足と左足が描く軌道を記憶することだ。それが生み出すストーリーに、身を委ねよう。
 「ナンバーテン」。それはフットボールという物語を紡ぐ者。
この雑誌は、そのためにある。
「No 10 Magazine」



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